社員が笑顔で幸せに働ける環境をつくることが、経営者の最大の使命。世界で一番、お客さまと社員を愛する会社に【株式会社 愛しとーと/那珂川市今光】


13年連続売上日本一のコラーゲンゼリー「うるおい宣言」をはじめとする健康食品や化粧品、インナーなどの企画・製造・販売を行う
株式会社 愛しとーと』(那珂川市今光)。同社で社員から“はっちゃん”と呼ばれ愛されているのが、代表取締役兼CEO・岩本初恵氏です。

 

「女性が子育てをしながら笑顔で働ける会社をつくりたいという思いが、会社の出発点だった」と言う岩本代表に、無料のキッズルームや社員食堂など、創業当時から女性をはじめとする社員たちの働きやすい環境づくりを続けてきた理由やSDGsに対する考え、今後の夢などをお聞きました。

 

起業したときの志が『全女性が笑顔になれば、どこの国も栄える』だそうですが、そう思われたきっかけやエピソードなどがあれば教えてください。

株式会社愛しとーと 代表取締役 兼 CEO 岩本初恵(いわもとはつえ)氏

 

会社を創業したのは1998年、私が37歳のときです。当時は、結婚したら家庭に入り、子育てをする女性が一般的でした。ただ、私のまわりには母子家庭も多く、子育てしながら女性が働ける場所はほとんどありませんでした。そこで、「女性が働きやすい会社を作りたい」と思ったのが、この会社の出発点です。

 

また、女性(母親)がイライラしていると男性(父親)も働きにくいですし、その影響を受けてしまうのは、いつも子どもです。子どもの笑顔は、母親の笑顔あってこそ。そのため弊社では、創業時から女性が仕事と家庭を両立し、楽しく過ごせるよう、会社で仕事をしながら子育てもできる環境をつくっています。

 

起業する際、健康食品に着目された理由は何ですか。

 

それは、父の教えがあったからです。父は漁師だったのですが、一族の中から事業で成功する者が出れば、親戚・家族も潤うと考えたのでしょう。幼いころから、経営者になるための幅広い知識や考え方、作法や人の育て方、精神力や会話力などを教えられて育ちました。

 

その父が、「足は第二の心臓だ。これからは足の弱い人が増えてくる。足が弱るのはコラーゲンが減っていくから。魚のコラーゲンは女性にとっても、人の健康にとっても重要な栄養素になる」と言っていたのです。その言葉から魚のコラーゲンについて研究を始めました。

 

ただ、一個人が依頼してもそうした研究を引き受けてくれる機関はなかなか見つかりませんでした。そこで、いろんな機関に研究をお願いしながら、その間に父の言葉をヒントに開発した、足の血行を良くする着圧式のストッキング(『美脚ちゃん』)の販売を始めました。

 

この商品が看護婦さんの口コミで広がっていったのが弊社の始まりです。その後、長年の研究の成果であるコラーゲンゼリーを商品化することができ、おかげさまで13年連続売上日本一という評価をいただくまでになりました。

 

社名を『株式会社愛しとーと』に変更したいきさつを教えてください。

 

創業時の社名は『HRK』でした。これは「人の気持ちになって(H)、利口に動ける(R)、こころざし(K)」という意味を込めたものです。でも、テレビCMで私が言った“愛しとーと”の印象が強かったのか、お客さまからも社名より、「愛しとーとの人」と言われることが多くなってきたのです(笑)。

 

もともと、「お客さまに愛される企業」ではなく、「この世で一番お客さまを愛する企業」をつくりたいという思いもあったため、分かりやすいほうがいいと思い改名することにしました。『愛しとーと』は、いわば、お客さまがつけてくれたような社名です。

 

無料のキッズルームについて教えてください。

 

最初にお話したように、無料のキッズルームは1998年の創業当時からあります。
実は、私自身これまでに3度の離婚を経験しているのですが、自分の子どもがキッズルームで育った第一号です。

 

弊社では、産休も1年は取れるのですが、なぜか産後3カ月ほどで職場復帰する社員が多いんですよ。せめて、赤ちゃんの首が据わるくらいまではゆっくり休めばいいと思うのですが(笑)…。赤ちゃんを連れて出社して、キッズルームに赤ちゃんを預けて仕事をしています。

 

ちなみに弊社の産休取得率、産休後の職場復帰率はともに100%です。社員の半分以上が、子育てをしながら働いている女性です。

 

 

赤ちゃんや未就学児だけでなく、放課後、学校から「ただいま」と帰って来る子どもたちもたくさんいます。夏休みや冬休みには、年上の子どもたちがキッズルームで、おむつを換えたり、宿題を見たり、ご飯やおやつを食べさせたり、年下の子どもたちの面倒を見ています。

 

会社に無料のキッズルームがあることで、社員の業務に何らかの影響が出ることはありますか。

 

「子どもがいることで仕事に支障がでるのでは」と思う人も多いようですが、私はメリットしかないと感じています。

 

第一に、親が働く姿を見ることで、子どもは必ず親に感謝し、尊敬するようになります。そうして育つと、自然といい子に育ちます。

 

キッズルームで育った子どもたちは、5・6歳になると自分から進んで電話をとったりもします(笑)。取引先の方も弊社のスタイルを理解してくださっているので、業務に支障はありません。

 

親の仕事を見て、弊社の仕事に興味を持つようで、キッズルームで育った子どもたちが学校を卒業し、社員になることも多いですね。「入社したら自分はどこに行こう」なんて話をしている子どももいます(笑)。

 

現在の従業員の男女比はどれくらいですか。

 

創業してしばらくは、社員の8~9割が女性社員でしたが、現在は男性社員も増え、女性6割、男性4割ほどです。

 

男性社員が増えてきたのは、自社で商品開発を始めたり、物流部門をつくったりしたためです。福岡など地元出身者だけでなく、県外からの新卒社員も多いですね。

 

不思議と性格が良く、優しい男性社員ばかりが入ってきてくれて…。おかげで社内結婚も増え、社員の家族や子どもが増え、今では会社全体が大きな家族のような状態になりました(笑)。

 

また弊社では、男性・女性という性別に関係なく、好きな部署でしたいことをしてもらうというスタイルをとっています。人事もなければ、稟議もプレゼンもありません。社員一人ひとりがやりたいこと、ほしいものが、弊社の商品やサービスに結実しているんです。

 

無料の社員食堂を始めたのはいつごろですか。また、どうして始めたのでしょう。

 

社員食堂を始めたのは、15年ほど前です。社員がコンビニ食品やカップラーメンなどを食べる姿を見て、「これじゃいけない」と思ったのがきっかけです。

 

お客さまを健康にしたいと言っている会社なのだから、まずは社員が健康な会社をつくりたいと思いました。最初のころは私一人で、当時80人ほどいた社員の食事をつくっていましたよ。

 

カレーをつくって、ご飯を炊いて、「みんな食べられるときに、食べて」という感じです。社員のお腹だけは空かせたくない、とにかく体にいいものを食べさせたい、という思いが強かったですね。

 

社員食堂の味噌汁は、だしからとり、味噌も自分たちで手作りしたものを使っています。食堂のメニューには、すべて熊本にある自社菜園で無農薬栽培した米や野菜を使用しているんですよ。

 

社員食堂に対する社員の反響は?社員食堂をつくったことで社員に何か変化はありましたか?

 

メニューは日替わりで野菜たっぷり、何より「おいしい!」と、社員たちも毎日社員食堂で食事するのを楽しみにしています。

 

以前は喘息・便秘・アトピーなど、特に肌の悩みや自律神経の不具合を抱えている社員が多かったのですが、社員食堂を始めて以降、みんなみるみる元気になりました。

 

発酵食品をたっぷり使い、油など酸化するものは基本的に使っていないので、太りにくいし、肌もきれいになったと喜んでいます。

 

社員たちの顔色は、私にとっては会社の顔色でもあります。みな人生の半分は仕事をするのですから、社員たちがどうすれば健康で楽しく働けるか、それを考えるのも経営者である私の仕事です。

 

社員食堂は社員の子どもたちも使えるので、親子で一緒に食事をすることもできます。

 

SDGsという言葉がない頃から、いろいろな取り組みをされていますが、岩本代表はSDGsについてどんな考えをお持ちですか。

 

SDGsという言葉自体は最近のものですが、ほとんどの会社は以前からSDGsの掲げる課題に取り組んでいるではないかと思います。取り組んでいないとすれば、その会社はきっと業績も伸びないはずです。

 

経営者は常に、今ある資源や人材を活かし、無駄をなくすことで、売上を上げるかを考えているものです。そういう意味で、SDGsはすべての企業にとって必要な考え方です。

 

SDGsのなかで経営者にとって一番重要なのは「社員がどうしたら幸せに生きていけるか」を考えることだと、私は思っています。

 

会社に無料のキッズルームと社員食堂があれば、社員は養育費も食費も節約しながら、安心して仕事に励むことができますし、仕事をしていても、子どもと一緒に時間を過ごすことができます。

 

 

こうした私の経営理念の根底には、「みんなが長屋に住む住人のように助け合いながら仕事をするべきだ」という父の教えがあります。私はこれを“長屋経営”と言っていますが、「長屋経営の上にしかビルは建たない(大きな事業は成り立たない)」というのが父の考えでした。

 

共働きでも会社で子育てができれば、少子化に歯止めをかけることができます。会社で社員のご両親の面倒をみられる施設をつくれば、老々介護の問題も解決できるかもしれません。

 

子どもたちを育てる場所として空き家を活用すれば、空き家問題にも解決の糸口が見つかるはずです。

 

昔ながらの長屋的生活に戻りさえすれば、いろんなものが活性化され、無駄なく生まれ変わっていくのではないでしょうか。

 

創業間もない頃は、銀行などから「こんなやり方じゃうまくいきませんよ」と言われたこともありました。しかし、「家庭的な会社でどこまでやれるかやってみます」と続けてきたからこそ、今の弊社があると思っています。

 

御社には定年もないそうですが、これはどうしてですか。

 

定年制度をなくした理由は、65歳以上の6人に1人が認知症患者と言われる問題を、企業が率先して解決していったほうがいいと考えたからです。10年以上前から定年制度をなくし、今は入社時の年齢制限も設けていません。

 

「定年がなければ、多くの人は認知症にならない」というのが私の持論です。定年し休んでしまうことで、働けなくなったと脳が判断して、脳まで休んでしまうのではないかと思うのです。

 

だから働きたいという意思がある限り、自分が働けると思う歳まで働いてほしい。そう考え、高齢の社員には「足が痛くなったらイスを用意するので座って仕事をしてください。手が動かなくなっても口は動くのだから、言葉で応援しなさい。判断する力が落ちてきたら、花の水やりをしてください」と話をしています。

 

高齢者の採用も積極的に行っており、2021年も10人ほどが入社しました。別の会社を定年になり、60歳過ぎて入社する人も多く、現在60歳以上の従業員は30人近くいます。最年長者は78歳です。

 

ほとんどの人が「この会社は企業らしくない」と入社してびっくりしますが、みなこれまでの経験を活かし、希望の部署で得意な仕事をしてもらっています。高齢者はまさに会社の宝だと思いますね。

 

那珂川市のシンボルツリーである“やまもも”の樹を残すための支援、五ケ山ダム周辺の桜の樹の植樹、地元の公民館で開かれる子ども食堂への食材提供など、地元に貢献する活動にも力を入れていらっしゃいますね。

桜の植樹式の様子

 

地元への貢献は、事業をさせていただいている地域への家賃みたいなものだと考えています。

 

地元から愛される企業でなければ、お客さまに愛される企業、ひいては日本から愛される企業にはなれません。だからこそ、損得勘定は抜きで、「頼まれごとは試されごと」だと思い、率先して受けるようにしています。

 

頼まれごとをしっかり受けていけば、それがいつの日か社員にも会社にもいい形となって返ってくると信じています。

 

今一番力を入れているSDGsの取り組みと、これからやっていきたい取り組みは何ですか。

株式会社愛しとーと 取締役社長 岩本凌 氏(左)

 

力を入れているのは、やはり少子化問題です。少子化と経済悪化は確実に比例するため、まず子どもの数を増やしていくことが先決だと考えています。

 

その先に大切になるのが、教育です。子どもたちの教育なくして、未来の発展はありえませんから。
会社のことは、社長である息子と社員に任せているので、私はこれからいろんなところで人を育てることに力を入れていきたいと思っています。

 

自分が教わってきたことを伝えながら、自分が育った地域を活性化できる、つまり町おこしをできる人材を育てていきたいですね。

 

福岡女子商業高校で講師として、「教科書のない授業」を行っているのも、那珂川市出身の経営者が増えてほしいという気持ちからです。経営者に必要な熱い思いや、言霊の力、感謝の大切さなど、私が考えるさまざまなテーマについて話をしています。

 

今後の目標や展望を教えてください。

 

私たちが目指すのは「心を通わす“通心販売”」です。そして、お客さまと心を通わせるのと同じくらい、社員たちの心を開くことが私には重要です。

 

私自身は大学も出ていませんし、決算書の読み方も分かりません。それでも、会社をここまで成長させることができたのは、私の考えに共鳴して集まってくれた社員のおかげだと心から感謝しています。何事も社員優先で考える経営の仕方は「甘い」「おかしい」と言われることもありますが、そうした経営を貫いてきたからこそ、今の弊社があるのです。

 

「安心して子育てができる会社」「社員食堂の食事で社員が健康になる会社」「定年がないことで高齢者が認知症にもならずいきいきと働ける会社」、何より「社員みんなが幸せに働ける会社」、そんなあり方を、多くの会社がまねして取り入れてくれるように、会社をもっと大きくしていこうと社員みんなでがんばっているところです。

 

 

それに、通販事業はどこにいてもできるのがいいところ。将来的には、国内だけでなく海外のどこでも社員が好きな場所行きたい場所で仕事ができるような会社にするのが夢です。

 

現在すでにアジア圏を中心とする6か国・地域に海外支店を設立し、その他アメリカやヨーロッパを含む地域でも販売をスタートしています。そして、2030年には30か国以上へ進出する予定です。

 

健康食品や化粧品を通して世界中の人に幸せを届けるだけでなく、会社で子育てをしていく環境や、長屋のようにみんなでご飯を食べられる環境、そして福利厚生は社員のためのものという考え方を、世界にも広げていければと思っています。

 

代表取締役兼CEO・岩本初恵

1998年、『全女性が笑顔になれば、どこの国も栄える』という志を胸に、現代表取締役兼CEOの岩本初恵氏が株式会社HRKを設立(2014年、株式会社 愛しとーとに社名変更)。ただ物を売る販売会社ではなく、心と心を通わす“通心販売”を目指し、13年連続売上日本一のコラーゲンゼリー「うるおい宣言」シリーズをはじめ、数々の健康食品や化粧品、インナーなどを企画・製造・販売。『国内通信販売事業』に加え、『海外事業』『食品事業』『eスポーツ事業』と幅広い展開をしている。
現在は、社長業を息子である岩本 凌氏に引き継ぎ、経営・子育て・食育・美容・ダイエットなどのトータルライフアドバイザーとして複数のテレビ番組にレギュラー出演。YouTubeやオンラインサロンでも様々な情報を発信している。

 

企業情報

株式会社 愛しとーと
■TEL: 092-954-0668
■住所:福岡県那珂川市今光6丁目23番地 [MAP]
■HP: https://aishitoto.co.jp/company/
■インスタグラム: https://www.instagram.com/aishito_to/