会社の未来ビジョン=“しあわせ、つながる”。社員みんなのアイデアをどんどん形に。自分たちでできることから、会社として社会に貢献していく【株式会社ピエトロ/福岡市中央区】

株式会社ピエトロ 代表取締役社長 高橋泰行。SDGs推進室のメンバーと。

 

1980年12月、福岡市天神三丁目の路地にオープンした『洋麺屋ピエトロ』から始まった『株式会社ピエトロ』。レストランの厨房で創業者・村田シェフが手づくりしたドレッシングが“野菜嫌いがなおる魔法のドレッシング”と呼ばれるようになり、今ではピエトロドレッシング、ピエトロおじさんを知らない人はいないほどです。

 

“しあわせ、つながる”をテーマにお客さま、社会、そして従業員全てが、未来も幸せであるために、そして未来を担う子どもたちのために取り組む、ピエトロらしいSDGsとは?

 

2017年4月、2代目社長に就任した高橋泰行社長に、ピエトロが考える“ピエトロらしさ”についてお話をお伺いしました。

 

“しあわせ、つながる”をテーマに掲げられていますが、この言葉に込めた思いとは?

 

お客さま、働く私たち、社会のみんなが幸せになる未来を目指し、“しあわせ、つながる”という言葉を掲げています。「ピエトロは何のためにあるのか」というともちろん、おいしいものを提供したり、商品を購入してもらうことも必要ですが、その先にいらっしゃるお客さまに本当に喜んでもらい、幸せになっていただくことが大切だと思っています。そして、働くスタッフも幸せじゃないとお客さまのことを幸せにはできないと思っています。さらに、社会があってこその我々(会社)でもあるので、社会の幸せにも少しでも貢献したいと考えています。その三方よしをしっかり進めるために、会社のみんなで考えて「PIETRO VISION」をつくり上げました。

 

社員のみなさんで話し合われ、考えられたものなんですか?

コロナが広がった時に、レストランが営業できなくなり、状況も予測できず、目の前は正直言って厳しい状態でした。しかし、この状況は2、3年は続くかもしれないけれども、永遠に続くわけではないからこそ、未来についてみんなで楽しく話をしようと“未来創造プロジェクト”を立ち上げ、全社で「未来のなりたい姿」についてグループワークを実施したところ、2000個以上の想いが集まりました。

 

その中で、同じ言葉や似ている表現などをまとめて、みんなの想いを88個に集約し、マップにしたのがこの「PIETRO VISION MAP」です。

 

 

難しいカタカナや、英語が入ったものではなく自分たちの言葉になっているのがすごくいいなと思っています。今、会社としてどこを目指しているのか?と迷ったときの道しるべとして活用できるものになっています。

 

半年かけて作ってくれたプロジェクトメンバーは大変だったと思います。集まった想いの中には、心に刺さる言葉がたくさんありました。“日本一ファン想いの会社”、“働く私たちがいちばんのピエトロファン”や、環境問題にしても、固い言葉ではなく、“地球の健康に貢献したい”など、素敵な表現になっていて、生きた言葉になっていると思っています。私たちの自慢のビジョンです。

 

今では、毎年「PIETRO VISION」の項目と結びつけた個人目標を作ってもらい、幸せになる未来を実現するために、「PIETRO VISION」に沿って行動しています。

 

様々なSDGsに取り組んでおられますが、ピエトロらしいSDGsとは?また、SDGsに取り組むうえで、社員の方への意識付けや理解促進で苦労された点はありますか?

 

ピエトロで掲げている4つの活動指針「こどもたちのイマとミライにhappyを‐食育‐」「地域の健康に貢献‐環境‐」「社会のしあわせ‐地域・社会‐」「働く私たちのしあわせ‐働きがい‐」があり、これは先程の「PIETRO VISION」と連動しています。

 

私たちは、できることから少しずつ取り組むこと、みんなで汗をかいて行動すること、他の企業とパートナーシップを結んで協力することを、“ピエトロらしい”SDGsと考えています。

 

取り組むにあたり、経営者が決めたことを社員に指示を出すと、社員にとっては楽しくないものになると思います。ピエトロでは、部署の業務とは別に社内横断型のプロジェクトがあるのですが、SDGsもそのプロジェクトになっています。若手から中堅の社員はどこかのプロジェクトに入ることになっていて、社員には入りたいプロジェクトを第3希望までヒアリングし、取り組むプロジェクトを決めています。その中でも結構SDGsのプロジェクトは人気があるんです。

 

プロジェクト一覧を拝見させていただきましたが、「LOVEマシーン」などプロジェクト名のネーミングが面白いものが多いようですね。

 

プロジェクト名はメンバーで考えてもらっていて、毎年名前が変わるプロジェクトもあります。「LOVEマシーン」は、以前は工場の「設備自主保全」というプロジェクト名だったんですが、もっと楽しく取り組めるように「LOVEマシーン」に変更になりました。このプロジェクトでは、まずは工場の機械にそれぞれ名前をつけることからスタートしました。名前を付けたことで、愛着が湧き、以前よりも機械を大事にしてくれています。機械が故障しても、故障したとは言わずに「○○ちゃんが、病気」などと言っています。

 

 

 

SDGsに取り組んだきっかけなどはあったんでしょうか?

ピエトロでは、以前から食育活動や地域活性化への取り組みは行っていましたが、SDGsの目標が採択されたことを機に、さらに会社として力を入れて取り組むことにいたしました。今のような4つの指針ができたのは、「PIETRO VISION」ができた後です。SDGsの取り組みは毎年少しずつ進め、いろいろな取り組みに広がっていきました。

 

社内浸透については、プロジェクトに入った社員が勉強をしながら進めてくれているのに加え、SDGs推進室も連携して、社内外への発信や推進を担ってくれています。

 

「PIETRO VISION MAP」の前でSDGs推進室のメンバーと。

取り組みの中には“SDGsパートナーズ”というものもありますが、こちらの取り組みを教えてください。

食の会社として、日本の食糧自給率や一次産業についての問題が気になっています。日本の一次産業の担い手がいなくなっていく中で、こんなに輸入食材に頼っていていいのだろうか、と食を生業とする会社である以上は考えなければいけないと思っていました。

 

そんな時にあるテレビ番組で紹介されていたのが『株式会社ベンナーズ』さんでした。漁業者の方々は魚を捕っても全てが売れる訳ではなく、味には全く関係ない理由で流通の前段階で廃棄されてしまう魚もあります。これを「未利用魚」と言いますが、食べられないということでもありません。ベンナーズさんは、そのような魚を加工して宅配事業を行っています。素晴らしい会社があるなと思っていると、福岡にある会社だと分かったので、次の日には電話をしてアポイントを取り、いろいろ話を聞かせていただきました。そして、何か一緒にできないかと話を始めました。

 

現在は包括連携協定を結び、ピエトロのレストランで、ベンナーズさんとコラボしたメニューを期間限定で提供させていただく他、通販限定のコラボ商品も販売しています。ピエトロで使う魚の量は多くはありませんが、少しでも「未利用魚」に注目が集まり、お役に立てることもSDGsの形だと考えています。

 

ベンナーズが提供する地魚とネギを合わせ、柚子の皮をアクセントに使ったペペロンチーノ。

能古島に、自社農場「のこベジファーム」があると伺いました。自社農場を持たれたきっかけは?またこちらで行っている食育イベントなどを教えてください。

 

先代社長の時の話になりますが、もともと1990年くらいに「ピエトロワールド」として学校やホテルなどをつくる計画がありました。しかし、バブルがはじけたことで計画が無くなり、土地を使っていない時期もありましたが、先代社長が「畑にしよう」と言いだしました。最初は遊びみたいなものでした。さつまいもを植えたり、自然薯を掘ったり。その当時は、先代と私と他4、5人ぐらいでやっていましたが、やっていくうちに、みんなにもこの体験をして欲しいと思うようになりました。野菜を自分たちで作って採れたての野菜を食べる、豊かな体験ができたらいいよねという先代の想いを継承している畑です。

 

大きいイベントでいうと年に一回、秋の収穫祭を行っています。毎年、小学生と保護者を対象に、体験型の食育イベントを行っています。自分たちで収穫をしてもらい、野菜を切ったり盛り付けた後、みんなで食事をするという体験を通して“食”の大切さを伝えるイベントです。参加される方の中には、野菜嫌いの子どももいますが、このイベントに参加して、「初めて食べられた」との言葉を聞くと、お役に立つことができて良かったと思います。

 

自社農場「のこベジファーム」を社員の方はどのような時に利用されていますか?

年に2回、社員はここで農作業体験の研修があります。いろいろな部署から集まって、一緒に汗をかいてもらいますが、収穫だけでなくハウスの組み立てや畑の片付け、石拾いなど、実際の畑仕事を体験してもらっています。

 

また、ファミリー収穫祭では、社員のお子さんたちや新入社員のご両親を招待しています。新入社員たちは照れくさそうですが、ご両親は会社の雰囲気や同僚を見ることで、安心して帰ってもらえているんじゃないかと思います。

 

 

ピエトロアップデートプロジェクト(旧称:働きがいプロジェクト)では、社員の方がより働きやすい環境にするため、オフィスをリニューアルされたそうですが、どのようなオフィスを目指されたのでしょうか?

オフィスリニューアルも基本的にはプロジェクトで考えてもらいました。「月曜日の朝に、会社へ行くのが楽しみになるようなオフィスにしたい」という想いからも、会社でのコミュニケーションを活発化するために、フリーアドレスを導入しました。

 

オフィスには、web会議ができる個室ブースや、立って作業ができるブース、円形や五角形のテーブルなどがあります。頭が固くならないようにと、なるべく角のないテーブルになっていますね(笑)。毎日いろいろな人がいろいろなところに座っていて、その日の仕事内容や気分によって席を決めているそうです。環境を変えることで仕事にも集中できますし、雑談をしてアイデアが生まれることもあると思うんです。

 

 

リニューアルされた本社オフィス、社員の方々の反応はいかがですか?

 

今のところ、「よかったです」と聞いています(笑)

プロジェクトのメンバーが丁寧にアンケートを取って、みんなの意見を取り入れてくれたからでしょうね。プロジェクトメンバーでなければ、あそこまで丁寧にはしなかっただろうと思います。

みんなの意見を取り入れて、形にするのは大変だったと思うので、メンバーたちへの感謝を込めて、みんな楽しんでくれていると思います。

 

 

御社では脱炭素社会への取り組みにも力を入れていらっしゃるそうですが、現在の取り組みや今後の予定を教えてください。

 

電力に関しては、この本社ビルにソーラーパネルを設置して太陽光による自家発電が行えるようにしています。また、郊外型のレストランについては、すべて再生可能エネルギーに切り替えました。

 

さらに、2026年春竣工予定となっている新工場の建屋の屋根にソーラーパネルを設置し、太陽光による自家発電を行う他、グリーン電力の導入も並行して進め、100%再生可能エネルギーで稼働する工場を計画しています。

 

脱プラに関しては、ドレッシングやパスタソースのボトルを2022年にバイオマスプラスチック素材へ切り替えました。ボトルだけでなく、ラベル会社と提携し、2024年5月末から順次、使用済みピエトロドレッシングのラベルが再び新しいラベルに生まれ変わる、資源循環型(ラベル to ラベル)のパッケージラベルを2商品に導入しました。他の会社と一緒にSDGsに取り組むことも大事だと思っています。

 

 

 

 

 

他にもどのようなことに取り組まれていますか?

 

『ピエトロ本店 セントラーレ』では、ピエトロおじさんの石鹸を販売していますが、この石鹸は、障がい者の方々が多く働いている会社で作ってもらっている石鹸です。小さい事ですが、障がい者の方がきちんと働いてお金がもらえることに役立てたらいいなと。

 

それ以外には、NPO法人とコラボしてシングルマザーとその子どもたちを対象に、食育イベントを開催しています。夏休みに保護者の方々が仕事をされていてなかなか夏の思い出ができない、ということを伺ったので、ピエトロとして何ができるかを考えた時に、やはり野菜を好きになってもらうための料理教室がいいのではと考え、開催しました。

 

(左)ピエトロおじさんの石鹸。(右)発芽大豆ミートブランド「Soycle(ソイクル)」とコラボした、動物性原料を一切使用していないパスタソース(畑生まれのなす辛、畑生まれのボロネーゼ)。

 

 

今後の目標や展望を教えてください。

 

ピエトロでは社会の役に立つことをみんなのアイデアでつくっていきたいと思っていますし、ピエトロだけで取り組むのではなく、パートナーや仲間をつくって「世の中を良くしていこう」とみんなが動けば、少しずつ形になるのではないかと思っています。

SDGsへの取り組みは、正直時間も費用もかかりますし、事業としてこれで売り上げにつながるものではありませんが、目先のことだけで考えず、会社として社会に貢献していく必要があるんだという覚悟を持って取り組んでいきたいです。また、社員が「世の中にいいことをしている」と会社に誇りを持ってもらえることが大事だと思います。

 

 

●代表取締役社長 高橋泰行

1964年12月生まれ、東京都出身。1999年に株式会社ピエトロへ入社。社長室長、2004年執行役員、2006年取締役執行役員、2008年常務取締役執行役員を歴任。2008年から食品事業や通販事業の責任者を務め、海外事業や製造部、レストラン事業など全部門の実務に携わる。2017年4月に専務を経て2代目社長に就任。

 

企業情報

株式会社ピエトロ
TEL: 092-716-0300
■住所:福岡県福岡市中央区天神三丁目4-5[MAP]
HP: https://www.pietro.co.jp/