地域に必要な機能をつなぎ、子育てと福祉で持続可能な未来を育てる【株式会社ラグジュアリー/福岡市博多区】

株式会社ラグジュアリー 代表取締役 春野英理。
株式会社ラグジュアリーは、2011年設立、福岡市博多区に本社を構える企業です。「社会のお困りごとを自分ごとに」という理念のもと、地域社会が抱える多様な課題解決に取り組んでいます。
企業主導型保育園「四季のいろ保育園」の運営をはじめ、保育士の人材紹介・育成、人材派遣、不動産事業、カフェ併設型コワーキングスペースの運営など、暮らしに寄り添う事業を幅広く展開。
さらに、食品ロス削減や運営する子ども食堂への食材提供といった取り組みを通じて、地域内で資源と想いが循環する仕組みづくりを進め、持続可能な地域社会の実現を目指しています。
代表の春野英理氏に、地域・社会への想いや事業展開、同社におけるSDGsへの取り組、今後のビジョンなどをお聞きしました。
「社会のお困りごとを自分ごとに」という理念に込めた想いを教えてください。

創業当初から今の理念が明確にあったわけではありません。事業を構築する中で数多くのトライアンドエラーを重ね、その過程で本当に大切なものをそぎ落としながら、現在の理念が形づくられていきました。
当初は利益を追求することが事業の中心になりがちでしたが、それだけでは長期的な継続は難しいと実感しました。大切なのは、社会のニーズに応え、課題を改善し続けること。
人から求められる存在であることこそが、事業を持続させる核であると考えるようになりました。
この理念は、どのような原体験や背景から生まれたのでしょうか。

倒産率や事業継続率に関するさまざまなデータを見ても、共通しているのは「社会課題に向き合っているかどうか」だと感じています。目先の収益性が高いからという理由だけで代理店ビジネスなどに参入し、一時的に利益を上げることはできるかもしれません。しかし、トレンドが過ぎ去った瞬間に立ち行かなくなるケースを多く見てきました。
一方で、社会的なニーズや課題に真正面から取り組んでいる事業は、時流が変わっても必要とされ続けます。そうした本質的な課題に向き合うことこそが、結果として事業の成功率や継続率を高める――私はそう確信しています。
保育・人材・コワーキングスペース・地域交流と、事業が多岐にわたっていますが、共通する軸は何でしょうか。

個々の事業だけを見ると、関連性がないように感じられるかもしれません。しかし「地域」という視点で捉えると、すべてが必要な役割を担っていると考えています。
一つの街には、住まい、子育て環境、小売、通信など、生活を支えるさまざまな機能が必要です。私たちは、単体の事業で大きな社会的インパクトを生み出すことを目的にしているわけではありません。どちらかと言えば、地域の中で本当に必要とされる機能やコンテンツを、一つひとつ丁寧に配置していくという考え方です。
例えば、そのエリアに人が集まれるカフェがなければ、つくる。コワーキングスペースがなければ、その機能を提供する。地域の中にスーパーや美容院があるのと同じように、生活に必要な機能を補完していくイメージです。
そして、それぞれの事業は単独で完結するのではなく、地域内でつながり合います。子どもを保育園に預ける保護者の方々が求めているものは何か。交流の場、習い事、住み替えのニーズなど、暮らしに関わる要素は連動しています。そのため、顧客同士や事業同士のクロスプロモーションにも力を入れ、地域全体として価値を高めていくことを大切にしています。
企業主導型保育園「四季のいろ保育園」で特に大切にしていることは何ですか。

一言で言えば、私たちの核のひとつは「カルチャー」です。
四季のいろ保育園では、日本の四季折々の文化や行事を大切にしています。七夕やひな祭り、節分、芋掘りなどは、地域や家庭で受け継がれてきた文化です。しかし、共働きが当たり前になった今、家庭だけでそれらすべてを行うのは簡単ではありません。
だからこそ、誰かが担わなければ失われてしまう体験を、保育園がしっかりと受け継いでいく。行事が多いのは、その想いがあるからです。幼少期にしかできない体験は、感情や好奇心の育ち方に大きく影響すると考えています。
もう一つの核は、「働くパパ・ママを応援すること」です。
習い事もその一環です。忙しい中での送り迎えや待ち時間は、保護者の方々にとって少なからず負担となります。また、親御さんが習い事をさせたい理由は、上手・下手よりも「さまざまな経験をさせたい」という想いにあるはずです。
そのため、英語やプログラミング、水泳、ダンス、体操など、複数の習い事を保育時間内に取り入れています。子どもが多様な体験を重ね、その成長過程を親御さんが実感できる環境をつくること。
「カルチャーの継承」と「パパ・ママ支援」――この二つが、私たちの核となる考え方です。
保育士支援や人材事業を通して、どのような社会課題解決を目指していますか。

大きな理想を掲げるのではなく、私たちは「できることから支える」ことを大切にしています。
まず、保育士支援の人材事業についてです。共働きが当たり前になった現代では、子育ての負担は保育現場や初等教育の現場に大きくのしかかっています。保育士は非常に激務であり、その支援なくしては、社会全体が安心して働き続けることはできません。だからこそ、保育士を支える人材事業は、社会基盤を支える取り組みだと考えています。一方で、支えるべきは保育現場だけではありません。
子どもが急に熱を出せば、親は仕事中でも迎えに行かなければならない。常にその可能性と隣り合わせで働いているのが、現代のパパ・ママの現実です。「きちんと帰れる」「安心して子育てができる」という働き方を実現できる環境整備も不可欠だと思っています。
そのため、人材事業を通じて子育て世帯に配慮した求人を強化するとともに、社内制度の整備にも力を入れています。四季のいろ保育園に保育料や雑費を会社負担で預けられることや、子ども手当など、子育てをしながら働きやすい環境づくりを進めています。
「保育士を支えること」そして「パパママを支えること」その両輪があってこそ、安心して働ける社会に近づくと考えています。
カフェ運営の中で食品ロスに課題を感じたきっかけを教えてください。

カフェを運営する中で、どうしても出てしまうお肉の切れ端や形の崩れたパンなど、廃棄せざるを得ない食材がありました。そうした現状に疑問を感じ、「何とか活用できないか」という想いが食品ロスへの取り組みの出発点です。
もともと社内では、CSRの重要性を繰り返し伝えてきました。今では社員一人ひとりに「もったいない」という意識が根付いていると感じています。食品ロスの課題も、特別な取り組みというより、その延長線上にあるものです。
創業当時、毎朝ゴミ拾いを続ける企業を見て、その意味を深く理解できていなかった時期がありました。しかし、継続することでそれが信頼や認知につながっていることに気づき、CSRは成長戦略の一環でもあると実感しました。事業が安定してきたタイミングで改めて社会的な取り組みを考えた際、当時取り組んでいたMDGsの中でも「飢餓」の課題が未達成であることに衝撃を受けたことも、大きなきっかけの一つです。
また社内では、不要な備品をフリマサイトを通じて循環させるなど、「もったいない」という価値観が浸透しています。食品ロスへの具体的な取り組みも、トップダウンではなく、社員が自発的に考え行動しているのが特徴です。
例えばコワーキングスペース利用者は忙しいビジネスパーソンが中心です。そのため、仕事の合間に片手で短時間に食べられるメニューが求められているのではないかと感じました。こうしたニーズへの対応を検討する中で、廃棄されがちなパンの端材も活かせるのではないかという発想が、このキッシュの原点です。
社会課題への意識と、現場の発想力。その掛け合わせが、私たちの食品ロス削減の取り組みにつながっています。
SDGsの視点から見て、商品開発で意識したことはありますか。

地域の中で資源や人のつながりが循環する仕組みを大切にしたいという思いがありました。
その一つとして、商品そのものに“ストーリー性”を持たせることも意識しています。保育園で子どもたちが苗づくりに関わり、自社農園(粕屋)で育て、成長した野菜を子どもたち自身が収穫する。そして、その野菜を宮崎の加工所で加工し、最終的に商品として仕上げる――「九州ねんりんスープ」は、そうした地域の循環の中で生まれた商品です。
九州の素材でつくり、九州の拠点で加工・商品化することで、地域の中で価値がつながる仕組みを意識しました。人と会う際の手土産としても、「ただ美味しい」だけでなく、その背景にあるストーリーごと届けられるものにしたいと考えました。それが結果的に、地域を応援することにもつながる商品設計になっていると思います。
自社農園と保育園、子ども食堂をつなぐ取り組みで得られた変化を教えてください。

一番の変化は、「地域」をより身近に感じられるようになったことです。おそらく社員の多くが、地域との関わり方を具体的にイメージできるようになったと思います。
苗を植え、育て、収穫し、食べる――言葉にすると当たり前の流れですが、実際にその一連を体験したことがある人は、特に都市部では多くありません。農園に足を運ぶこと自体が特別なイベントになっている今、日常の延長線上で「育てて食べる」体験ができることには大きな意味があります。
さらに、その取り組みを通じて、地域の方々が共通の目的のもとに集まるようになりました。損得ではなく、「地域をよくしたい」「子どもたちのために」という想いでつながる関係性が生まれています。
そのつながりが、やがて雇用や新たな事業機会につながり、結果として地域全体の活性化へと広がっていく。そうした循環が少しずつ生まれていると感じています。
改めて実感しているのは、「目的を共有すること」の大切さです。それが、人と地域をつなぎ、持続的な発展を生み出す原動力になるのだと思います。
これらの取り組みが地域にもたらしている価値は何だと感じていますか。

これらの取り組みが地域にもたらしている価値は、「意識の醸成」だと感じています。廃棄予定食材の活用や「もったいない」という姿勢を発信し続けることで、地域の中に少しずつ意識の変化が生まれていると思います。地元企業が前向きな取り組みを行い、評価されることは、地域にとっても誇らしいことです。「この街にはこういう企業がある」と自慢できる存在になること自体が、一つの価値だと考えています。
また、企業が本気で取り組む姿勢を見せることで、「自分たちもできることからやってみよう」という意識につながります。社内では分別や食品ロスへの配慮が自然と浸透していますし、関わる方々にも同じような変化が広がっていると感じます。行動することで、自分たち自身も律され、周囲にも良い循環が生まれるのです。
実際に地域の方から「子育てに力を入れている会社ですよね」と声をかけていただくこともあり、取り組みが少しずつ浸透している実感があります。
大きなインパクトというよりも、日々の積み重ねによって地域の意識や誇りを育てていくこと。それこそが、私たちの取り組みが生み出している価値だと感じています。
福岡という地域で事業を行う意義をどのように考えていますか。

私は海上保安庁に勤めていた父、その父である祖父と、二世代にわたり海に関わる家庭で育ちました。幼少期は管区のある地域を中心に、10回ほど転校を経験しています。大阪、横浜、奄美大島、沖縄など、さまざまな土地で暮らしてきました。
そうした経験を経た上で、やはり「福岡はいい街だ」と心から感じています。自分が好きだと思えるこの街のために、良い取り組みができているという実感を持てること。それ自体が、福岡で事業を行う大きな意義だと思っています。
特に、保育事業や福祉事業など、行政と連携しながら進める社会福祉分野の取り組みには強い意義を感じています。保育園の子どもたちが健やかに育ち、障がいのある方の就労につながる。そうした支援が地域の中で循環している実感があります。
自分が愛着を持てる地域で、次の世代や必要とされる方々のために貢献できること。それが、福岡という地域で事業を行う最大の意義だと考えています。
今後さらに力を入れていきたい事業や分野を教えてください。
-500x375.jpg)
今後さらに力を入れていきたいのは、障がいのある方の「一般就労」の分野です。特に、法定雇用率の引き上げという社会的課題に本格的に取り組んでいきたいと考えています。
当社では福祉事業所として、就労継続支援A型・B型事業を運営し、現在約40名の方が訓練を行っています。障がい特性は一人ひとり異なりますが、特定の分野において非常に高い能力を発揮する方が多くいらっしゃいます。
一方で、社会全体では深刻な人手不足が叫ばれています。にもかかわらず、活躍できる可能性のある人材が十分に活かされていない現状があります。
実際に、当社から一般就労に進んだ方々は、現場で欠かせない存在になっています。退職されると困る、というレベルにまで成長しているケースも少なくありません。こうした関係性こそが、企業と本人の双方にとって望ましい姿です。
このようなプラスの関係性を築くためには、本人側のスキル向上だけでなく、受け入れる企業側の理解と工夫も不可欠です。特に「合理的配慮」の考え方が十分に浸透していない企業もまだ多く、そこへの啓発や支援も重要だと考えています。自社だけで抱えるのではなく、どの企業でも活躍できる人材を育て、企業側の意識も高めていく。その両面から取り組むことで、長期的で持続可能な雇用を実現したい。社会課題の解決と企業成長を両立させる分野として、今後さらに力を注いでいきたいと考えています。
将来的に、どのような企業として社会に存在していたいですか。
将来的には、「地域の核」となる企業でありたいと考えています。
無理に領域を拡大するのではなく、大切にしているのは、あくまで“地域にとって本当に必要なものを提供する”という視点です。
需要と供給のバランスを見極めながら、そこに暮らす人にとって価値があるかどうかを基準に判断します。例えば、大きな病院があれば、その近くに薬局があることは利用者にとって自然で必要なことです。そうした関係性の中で機能する存在でありたいと思っています。
地域の中で「あの施設もこの会社が運営している」「このサービスにも関わっている」と認知され、暮らしの中に自然と溶け込んでいる状態。それを積み重ねていくことが、結果として企業のプレゼンス向上にもつながるはずです。
規模の拡大そのものを目的にするのではなく、地域にとって欠かせない存在になること。
それが、私たちが目指す企業の姿です。
これからの社会を担う若い世代や地域の方へ、伝えたいメッセージをお願いします。

これからの社会を担う若い世代や地域の方々には、まず「地域を大切にしてほしい」と伝えたいです。
今は、引っ越しても隣の方に挨拶をしないことが珍しくない時代です。地域とのつながりは、以前に比べて確実に希薄になっています。けれど、本来は日々の挨拶のような小さな行動こそが、地域との大切な接点だったはずです。その一つひとつの積み重ねが、安心して暮らせる街をつくっていくのだと思います。
これからはAIやDXの進展によって、オンラインで働く機会がさらに増えていくでしょう。働く場所は自由になっても、私たちはどこかの地域に「住んで」います。そこには自分の大切な人たちも暮らしています。だからこそ、自分が暮らす地域に関心を持ち、関わり、応援してほしいのです。
仕事を頑張り、地域に貢献し、地域内で経済を循環させる。その積み重ねが、より住みやすい街をつくります。行政の施策や街の環境整備も、最終的には私たち一人ひとりの当事者意識と行動の延長線上にあります。
地域を大切にすること。そして、自分もその一員であるという当事者意識を持つこと。それが、これからの循環型の社会をつくる第一歩だと考えています。
●代表取締役 春野英理
株式会社ラグジュアリー(2011年設立)代表取締役。九州大学大学院経済学部卒業。二代続く公務員家庭に育つも、22歳で起業し実業の道へ進む。美容事業を皮切りに30業態以上の企画立案から構築、譲渡・売却までを経験。現在は不動産事業、保育事業、人材紹介・派遣および教育事業を中心に、地域に根ざした事業を展開する。自身の子育て経験を原点に、地域全体を支える包括的な事業づくりに取り組んでいる。
企業情報
株式会社ラグジュアリー
■TEL: 092-645-1317
■住所:福岡県福岡市博多区千代4-4-11 L/S BLD 2F(本社)[MAP]
■HP:https://luxury-ltd.com/
