1人1人が社会貢献活動への“1歩を踏み出す=ACTIONを起こす”輪を広げ、福岡の街から日本を元気にするムーブメントを巻き起こす
『アビスパ福岡株式会社』は、福岡市をホームタウンとして活動するJリーグクラブ「アビスパ福岡」を運営している会社です。スポーツを通じて「子どもたちに夢と感動」を「地域に誇りと活力」を与えることをクラブ理念としています。
Jリーグクラブの運営に関わるグッズ販売やスクール事業だけでなく、様々なホームタウン活動など、ピッチ内外で理念を体現する活動に取り組んでいます。特に地域貢献活動には力を入れており、クリーン活動やブラインドサッカー体験会など幅広い活動を年間2300回(2022年実績)以上も開催。2023年には社会連携プロジェクト『FUKUOKA TAKE ACTION!』をスタートし、パートナー企業との共創による理念活動を推進しています。
2015年の代表取締役社長就任以来、クラブ経営の陣頭指揮を執り続けてきた川森会長に、プロジェクトを発足したいきさつや具体的な地域貢献活動、今後の展望などについてお話をお聞きしました。
代表取締役社長に就任されてから、主にどんなことに取り組みましたか?
当時、アビスパ福岡は経営難に陥り、Jリーグクラブに加盟するクラブライセンス剥奪の危機に直面している状態だったので、一番の任務は経営の立て直しでした。
サッカーのことは詳しくありませんでしたが、スポーツクラブも企業も基本は同じです。損益の確認、人事管理、収支の透明化、コスト削減など一般の会社と同じように、一つ一つ改善に努めました。現場の理解を促すため、強化部長にも経営会議に参加してもらって、クラブ予算や事業方針への意思共有を図りました。
経営の立て直しを始めて、感じたことはなんですか?
初年度(2015年)にJ1に昇格したので、事業サイドとサッカーの現場が一体感を持って一年間運営できた成果だと思いました。ただ2016年には降格してしまったので、同じことを繰り返さないためになぜ降格したのかをしっかり反省し、チーム人件費の投資を行って戦力の強化に努めました。
そして2020年に再昇格し、前年度の年商よりも高い強化費を設定して事業計画をスタートしたのですが、コロナ禍になってしまうんですよね。無観客試合やスタジアムの収容制限などで、投資と回収のバランスが一気に崩れてしまいました。本来、クラブが債務超過になるとJリーグのライセンスを失うんですが、特例措置が発令されているので、その間にまた経営の立て直しを図っているところです。
そんな厳しい状況の中でも、昨シーズン(2023年)は大変素晴らしい戦績を残しましたね。この結果についてどう思いましたか?
戦績面では、2020年から指揮を執っていただいている長谷部監督のスタイルがチームに浸透し、投資に対して非常にパフォーマンスよく結果に結びつけていただいたという印象を持ちました。Jリーグ全体から見れば中位くらいの投資額でも、強化部長がポジションごとに適切な選手を獲得し、監督がそれを上手くマネージメントするという、その両輪が非常にうまく回っているなと思います。それが、経営面でも3期連続でクラブの過去売上を更新(予定)という結果に繋がっているのではないでしょうか。
アビスパ福岡はSDGsにもかなり力を入れていますよね。それはなぜですか?
実はアビスパ福岡は30年前から、サッカースクールの運営や地域イベントへの参加、学校訪問、チャリティー活動など、いろいろな地域貢献活動を行なっています。でもこれはJリーグチームだったら多かれ少なかれどこのチームもやっていることなんですよ。Jリーグ自体が、地域に愛されるクラブとなるためのホームタウン活動を実践しているからです。チームの呼称に必ず地域名が入るのもそのためですね。またホームタウン会議などを通じて、各クラブの活動の共有や情報交換、各種調査などを行い、この活動を推進しています。例えば私がこうやって取材を受けて社会に発信したら、ホームタウン活動として報告し、ポイントがカウントされることになります。
さらにJリーグでは、社会課題や共通のテーマに対し、地域や企業・自治体・学校などとJリーグクラブが連携して取り組む「シャレン!(社会連携活動)」を発信しています。地域の各チームは、従来のホームタウン活動にシャレン!を取り入れ、社会貢献や連携の輪を広げることができるようになりました。もちろんシャレン!を通じて、SDGsにも貢献しています
2023年に発足した『FUKUOKA TAKE ACTION』について教えてください。
アビスパ福岡が今まで取り組んできた幅広い地域貢献活動を、自治体や地場企業、学校やNPO団体などと連携することよって、更に社会貢献や活動の輪を拡げていくために発足したのが『FUKUOKA TAKE ACTION』です。【共育】【社会/健康】【街づくり】の3つのプロジェクトテーマに沿って、「アビスパ福岡 オフィシャル・シャレンパートナー」(*1)企業等と共に連携し、持続的な共創型の社会貢献活動を推進する取組になります。初年度は19社の企業に参画していただきました。
ホームタウン活動とか社会奉仕活動というと、ボランティアで誰かが犠牲になって手出しをして、少し無理をしながらやっているというイメージを持っている方もいるかと思います。でもこの『FUKUOKA TAKE ACTION』は、カテゴリー別のプログラムを提供するオフィシャルスポンサー商品なんですね。1つの会社では発信力や人手が足らなくてできない活動も、アビスパ福岡の発信力を使うことにより、活動の幅が大きく広がります。様々な企業と協力して行う地域貢献活動を商品化してマネタイズすることにより、2023シーズンは19回のアクションでのべ1,537名が参加し、約2,000万円のスポンサー料をいただきました。
(*1)シャレンパートナーとは、アビスパ福岡と共に、『FUKUOKA TAKE ACTION』のプロジェクトテーマに沿って、共に連携し、持続的かつ共創型の社会貢献活動を推進するパートナー企業等のことを指します。
そうしたパートナー企業と共に行う地域貢献プロジェクト「FUKUOKA TAKE ACTION」では具体的にどういった活動を行なっていますか?
19社のシャレンパートーナーは様々な分野の企業となりますので、SDGs17の目標に対する独自のスキームを持っている企業もあり活動によって手を挙げた企業が担当となります。他の18社とアビスパ福岡が一緒に活動するのですが、これがシャレンパートナーの大きな特徴でありメリットですね。
活動内容は多岐に渡るのですが、例えばビーチクリーン活動があります。
シャレンパートナーの中に日本の海洋問題に積極的に取り組んでいる企業があり、その企業に活動の指揮を執っていただきました。セミナーやワークショップで環境問題に対する理解を深めたあと、試合の前に西戸崎のビーチにてビーチクリーン活動を行いました。ペットボトルやごみを拾う活動をイメージされる方がほとんどかと思いますが、ザルを使って砂の中のマイクロプラスチックを回収するんですね。こんな小さなプラスチックを魚たちが食べ、その魚を私たちが食べることで、毎週クレジットカード1枚分約5gのプラスチックを摂取(魚以外からも含め)しているとの報告があるそうです。回収作業は地味な活動かもしれませんが、とても印象深かったですね。
選手や会長も活動に参加されているのですね。
試合前に参加する選手は、主に怪我などでベンチ入りできない選手になります。
ビーチクリーン活動のときは、シャレンパートナー各企業の従業員様やご家族の皆さま、福岡市役所の皆さま、大学生、アビスパ福岡スタッフ、そして参加可能な選手が参加し、総勢100名での活動となりました。
ブラインドサッカー体験会も行なっていますよね。
アビスパ福岡では2004年より、ブラインドサッカーチーム「ラッキーストライカーズ福岡」の活動を支援しており、チーム強化や普及活動に取り組んでいます。
コロナ禍によりコミュニケーションの希薄化がさらに加速したと言われておりますが、ブラインドサッカーはまさにコミュニケーションが重要なスポーツです。「見えない」状態で、お互いのコミュニケーション、仲間への信頼など常日頃から私たちの周りで大切とされていることがとても重要になります。
そういったコミュニケーションのスキルアップに役立つということで、企業や自治体から体験会をやってほしいとのお声掛けもよくいただきますね。また法務省との取組で、少年院/少女院でも毎年実施しています。近年は少年少女のひとり犯罪が増えているので、社会復帰した後の人との関わり方をブラインドサッカーで体験してもらえればと思います。
現在どのくらいのパートナー企業がいますか?
初年度は19社でしたが2024年度は現時点で33社になりました。
オフィシャルスポンサー商品なので、基本的にはシーズン前半に集めるのですが、このシャレンパートナーは夏以降も社数が増えるという特徴があります。これはおそらく、企業の予算の出所が関係しているのだと思います。社会奉仕活動に関わる予算を持っているけど具体的に何をしたらいいのか決めかねて、シャレンパートナーに参画したという企業もいらっしゃいますね。大手から中小中堅企業まで企業規模問わず、シャレンパートナーをきっかけに様々な企業に参画していただいています。
どのような企業にパートナーになってほしいと思いますか?
毎月活動をするので、スポーツと社会奉仕活動・連携活動に関心のある企業になっていただくといいなと思います。年間プログラムをきちんと作って、この時期にはこういう活動をしましょうという風に、熱量を持った核となっていただきたいです。そしてそういう企業の周りに、こういう活動って大切だよねって企業や人々が集まってきてくれるようになることを望みます。
また地域貢献活動やSDGs推進の必要性を感じているけど、自社内でのマンパワーが足りなくて実現できていないとか、具体的なアイデアがなくて困っているという企業もぜひ一度、問い合わせいただければと思います。
『FUKUOKA TAKE ACTION』の活動を通して伝えたいことはなんですか?
私たちが実践しているSDGsの取組について、福岡の皆さまに知っていただくきっかけになればと思います。特に子どもたちに参加してほしいですね。地球環境の様々な課題やSDGsの取組について子どもたちにどう伝えていくかを考えるとき、スポーツクラブはとてもいいハブになると思います。今日サッカー観に行くけどその前にビーチクリーン活動に参加しようよとか、プログラミング教室でゲームプログラムを習ってみようとか。いろいろな活動に参加して行く中で、自分の感性にヒットするものと出会い、楽しい経験を積み重ねながら、振り返ってみればそれが実は地球環境に良い結果に繋がっていくことが、これからの社会に大切なことなのではないかと思います。
今後の目標や展望を教えてください
これはチームの目標ともつながるんですけど、クラブ理念で「感動と勝ちにこだわる」というスローガンを掲げているんですね。でもそれは、自分たちが「感動と勝ちにこだわる」ということを口にするのではなく、地域の皆さんが「アビスパの試合を観て感動したよね」とか「勝ちにこだわってるチームだよね」って言ったときに初めてそこに価値が出てくるのではないかと感じています。なのでこの『FUKYOKA TAKE ACTION』を通じたSDGs活動に関しても、私たちがあれこれ言葉で発信するよりも、地域の皆さんに「アビスパ福岡は地域連携活動を一生懸命やっている」と評価していただけるようにこれからも取り組み続けていきたいと思います。
●代表取締役会長 川森敬史
1965年11月、東京都渋谷区出身。84~89年工務店で営業などを担当。その後、91年に不動産賃貸仲介のエドケンコムズ(現Apaman Property)に入社、賃貸営業に初めて携わる。2003年10月アパマンショップネットワーク(現APAMAN)入社。04年10月常務取締役。14年にAPAMAN関連会社のシステムソフトがアビスパ福岡の増資を引き受けて筆頭株主になったことに伴い、15年3月からアビスパ福岡社長。23年アビスパ福岡代表取締役会長、現在に至る。
企業情報
アビスパ福岡株式会社
■TEL: 092-674-3020
■住所:福岡市東区香椎浜ふ頭1丁目2番17号[MAP]
■HP: https://www.avispa.co.jp/